2011年10月31日
30年ぶりの再会 2/2

民家の建ち並ぶ街並みの中にシンプルな倉庫がひとつ。ここがBozoを輸出している問屋なのか意外と質素なんだなあ、そんな印象を持った。建物の中に入り社長らしき人と対面する。まだ二十歳そこそこのtassiはおどおどと遠慮がちに挨拶し、目の前の優しそうな男性から名刺を受け取る。その名刺には「栄工社」と書かれてあった。えいこうしゃ、エイコウシャ、Eikoshaと何度も口の中で唱えると、あのマンドリンが目に浮かぶではないか。もし間違いだったら申し訳ないのですが、と初めて手にしたマンドリンのことを話すと、「そうです、あのマンドリンは我が社の名前をつけた楽器です」と胸を張って告げられた。やっぱりそうだったか。
Bozoを求めて名古屋まで来た甲斐があった。昔の恋人に偶然、いや引き寄せられるように再会したような、心がキュンとする瞬間だった。懐かしい話で盛り上がりBozoを何本か試奏させてもらい、tassiはお気に入りの一本を大切に抱え名古屋駅まで戻った。腹が減っていたのでどこかで名物きしめんを食べたが、それがどんな味だったか思い出せない。よっぽどギターで頭がいっぱいだったのだと思う。きっと帰りの新幹線ではケースを撫で撫でしながら座っていたことだろう。
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二日酔いの頭でそんな昔のことを思い出すうちに、そうだ今日は休みなんだから「Eikosha」を探して行ってみよう。そう決断した。といっても住所、電話は分からない。しかし1980年代と違って現在は「検索エンジン」という便利なツールがある。すぐに栄工社はみつかった。ホテルから地下鉄に乗れば30分ほどで着く場所にある。tassiは身支度を整え颯爽と名古屋の街を歩き始めた。
当時の記憶は全くないので地図を頼りに歩くと、しばらくして住宅街の真ん中にその倉庫を発見した。卸問屋だからよそ行きの社屋は必要ないのか、なんとなく建物は当時のままのようである。また今日は休日らしく人の気配はない。会社の表札を見ると筆記体で書かれた「Eikosha」の文字が見える。マンドリンのヘッドにあった文字はもしかしてこれだったか。目を閉じると懐かしい青春時代が思い出される。しかし閑静な住宅街で、よそ者が天を仰いでいる姿はかなり怪しい。後ろ髪を引かれる思いでそそくさとこの場を去った。
帰りは名鉄瀬戸線に乗り栄町まで。ちょっとした小旅行だったが清々しい気持ちになった。上を見ると秋の爽やかな空に吸い込まれそうだ。そろそろビールが飲みたくなってきたなあ。
CASIO EX-FH100
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この記事へのコメント
1. Posted by はる 2011年10月31日 20:11

30年の歳月は、tassiさんにとって、どんな時間
でしたか?
たまには、自分の歩んできた道を
そっと振り返ってみるのもいいものです。
今、30年前に聴いた、さだまさしの『主人公』が
ふと甦ってきました。