2018年03月08日

プレッシャーからの解放

d2bb7288.jpg3月6日

朝早くNHKにて幼児番組の劇伴録音。音楽は栗原正巳氏。tassiはアコギ、ガット、ウクレレ、バンジョーで参加。

本日は珍しく打ち込みナシで、ミュージシャンが一堂に会しての一発録りである。一発録りと言ったって、ProToolsを使ってマルチで録っているワケだから差し替えは可能である。そういう意味では変な緊張感はない。それよりもミュージシャン全員が、「セーノ」で一緒にプレイできる、今となっては貴重な機会だから、この瞬間を楽しまなければね。

劇伴といっても厳密に尺の縛りがあるわけではないので、リハーサルをする中でテンポも全員で相談しながらその都度変わっていく。また、曲によってはクリックを外し、全員の自然なグルーブに任せるというシーンもあった。まるでバンドでレコーディングしているようだ。シビアに時間に追われた「お仕事」の劇伴録音とは違う雰囲気の、和やかなレコーディング風景である。

tassiが仕事を始めた40年ほど前は、アナログマルチが徐々に普及してきた頃で、当時は16chが普通だったと記憶している。その後24→36と徐々にチャンネルが増えていった。それでもチャンネルが足りなくなると、ピンポンしてチャンネルを稼いでいたなあ。その作業で待ちになっても、その時間もギャラに反映されていた、今では考えられない良い時代だったのである。

ここNHKはというと当時はまだマルチレコーダーが導入されておらず、本日の506スタジオでさえも6mmのアナログ、モノ1発同録だった。なので誰かが途中で間違えると、全員で最初から録り直しというとオソロシイ結果が待っていた。それは緊張感あふれる現場だったろうことは、想像に難くない。

だからレコーディング・スタジオで仕事するということは、単に演奏技術だけではなく、その緊張感の中でも十分なパフォーマンスを出せる、心の強さを併せ持ったミュージシャンだけに許された世界だったと思う。もちろんエンジニアも同じプレッシャーを感じていたに違いない。

さて本日は作曲の栗原氏の人柄のおかげもあってか、レコーディング自体は順調に和気藹々と進み、当初予定していた時間を待たずに無事に終了した。これが40年前だったらこうはいくまい。テクノロジーの進歩は、時として演奏技術の退化を心配する向きもある。しかし逆に変な精神的プレッシャーから解放され、かえって伸び伸びとした演奏を引き出すための、良き技術革新だと確信した1日だった。


SONY α7S / VOIGTLANDER NOKTON Classic 35mm F1.4

fukasawaman409 at 00:10│Comments(0)work 

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